デジタル空間の死への意識が高まる
高齢化が進み、年間死亡者数が増え続ける多死社会では、死への関心が高まっていくでしょう。リアルな世界の生前整理だけでなく、デジタル空間のデータを管理する「デジタル遺品整理」にまで意識を向ける人も増えてきました。
「死後も生き続ける」選択肢が登場
技術の進歩は、人の死生観を変えていきます。ブログやSNSなど、デジタル上のデータから個人の複製「デジタルクローン」を生成できれば、芸術家や作家は死後も創作の継続が可能です。やがて一般生活者にもデジタル上で生き続ける選択肢が普及すれば、生前の夢をデジタルクローンに託して活躍し続ける人などが現れるでしょう。残された人々は故人のデジタルクローンと会話できるようになり、孤独を感じなくなるかもしれません。一方、「医学的な死」の受け取り方をめぐり、身近な人や社会と価値観が対立して悩む人も登場。いずれにせよ、「死んだら終わり」という価値観は変化していくでしょう。
「デジタルの死」を嘆く人が増える
また、メタバースなどで複数の自分を使い分けるようになれば、「デジタルの死」の捉え方も多様になります。デジタル上だけでつながる人間関係が増加することで、アカウント削除を大切な人との別れとして「医学的な死」と同等に重く捉える人も増えるでしょう。「デジタルの死」が周囲の人や本人に自分の一部を失うような虚脱感をもたらすなど、「リアルの生」にまで影響を及ぼします。デジタル上で安易な死を招かないための対策や別れの儀の必要性が議論されていくかもしれません。