生活を支える生態系の再生が目標に
世界では、地球環境を守る取り組みが進められています。しかし、解決すべき課題はいまだ山積み。こうした中、単に脱炭素によって気候変動を抑えるのではなく、生物多様性の損失を止めて自然を回復軌道に乗せる、つまり環境にとってプラスの状態に反転させる「ネイチャーポジティブ」を掲げる企業が増えていきます。
生き物にとって快適な街づくりへ
ネイチャーポジティブの考え方は、街づくりの分野にも広がります。ヒートアイランド対策から始まった都市部の緑化は、点在する緑地をつなぎ、生物の生息地を広げる「エコロジカル・ネットワーク」へと発展。地域によっては、生物多様性に配慮した建築が義務付けられるでしょう。従来は害虫・害獣とみなされてきた生き物との共生に寛容な人と、自分の生活圏内に自然が入り込むことを受け入れられない人との間で、価値観の違いによる摩擦が大きくなるかもしれません。そうした違いを前提に、人と動植物すべてにとって快適な住環境を模索することが課題となります。
食生活でも動植物視点の豊かさを意識
人間以外の生き物に対する考え方の変化は、食生活にも表れます。たとえば、害獣と呼ばれる動物は駆除するのではなくジビエとして命をいただく。野菜を育成環境に近い状態で保存できる冷蔵庫が登場する。他の生き物の視点に立ち、家畜や農作物のストレスについても議論されるようになっていきます。