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ホームソリューション事業部
モノづくり改革本部
本部長久保田 淳
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ホームソリューション事業部
モノづくり改革本部
主管技師友部 克史
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ホームソリューション事業部
生活家電本部 生産技術部
化学技術グループ 主任技師塩家 洋一
「使い捨て」から「使い直す」へ
再生プラスチック活用のはじまり
再生プラスチックは、
バージン材とどのような
違いがあるのでしょうか?
モノづくり改革本部 久保田:再生プラスチックとは、一度使われたプラスチックをリサイクルした材料のことです。再生材には、工場で発生した端材などを再利用する「プレコンシューマー材」と、製品として使用された後に回収・再利用される「ポストコンシューマー材」がありますが、特に活用に向けて技術開発に注力しているのは後者になります。
再生プラスチックを活用する大きな理由の一つは、新たな化石資源の投入を抑え、資源を有効に活用できることです。新たに石油から作られるバージン材は石油の採掘・運搬・精製などに多くのエネルギーを必要としますが、使用済み製品から回収した材料を再利用することで、新たな資源投入を抑えることができます。
家電分野で再生プラスチック活用が
本格化したのは
いつ頃なのでしょうか?
生産技術部 塩家:背景にあるのは、1990年代以降に顕在化した、大量生産・大量消費・大量廃棄の問題です。これにより、埋立地の逼迫などの社会課題が生じていました。さらに、限りある資源を使い続けることへの危機感も高まり、容器包装や自動車など、さまざまな分野で資源循環の取り組みが進められるようになりました。資源を採掘して製品をつくり、使い終えたら廃棄する、いわば一方通行の「リニアエコノミー(直線型経済)」から、資源を回収・再利用し、循環させる「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」への転換が求められるようになったのです。
そこで国としても、1998年に「家電リサイクル法」を制定し、使用済み家電品に含まれる資源を適切に回収・再商品化する仕組みの整備を進めました。
モノづくり改革本部 久保田:プラスチックは長い間、「使い捨て」が当たり前の材料でした。その流れを大きく変えたのが家電リサイクル法の制定です。家電品には大量のプラスチックも使用されていることから、使用済み家電品からプラスチックを回収し、再び製品に活用する取り組みが進みました。
資源循環社会への第一歩
「家電リサイクル法」
家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)は、廃棄物の削減と資源の有効活用を目的に、使用済み家電品の回収・再商品化の仕組みを定めた法律。対象は「エアコン」「冷蔵庫・冷凍庫」「洗濯機・衣類乾燥機」「テレビ」の4品目で、消費者、小売業者、製造業者などがそれぞれの役割を担い、自治体や国も制度の適正な運営を支えている。
環境に配慮した選択肢を届ける
家電メーカーだからこそ果たせる役割
さまざまな環境課題に取り組む中で、
再生プラスチックの活用を重要なテーマの一つとして推進している理由は何でしょうか?
モノづくり改革本部 久保田:やはり家電メーカーとしての責任があるからです。家電品は私たちの暮らしを便利にし、新しい体験や喜びを届ける存在ですが、環境課題が深刻化する中で、「次の世代へ持続可能な形でつないでいく」ことも重要な役割になっています。また、社会課題の解決に貢献し、持続可能な社会の実現をめざすことは、企業として果たすべき大切な責任です。再生プラスチック活用への取り組みも、環境活動にとどまらず、事業を通じて社会価値を生み出す重要な経営課題だと捉えており、推進しています。
生産技術部 塩家:家電メーカーが資源循環において大きな役割を果たせることも、取り組む理由の一つです。家電品は、設計や材料の選び方によって、リサイクルのしやすさや資源循環の効率が大きく変わります。言い換えれば、家電メーカーだからこそできることが数多くあるのです。
そうした考えのもと、当社では資源循環を製品の設計段階から考える「環境配慮デザイン」を推進しています。再生プラスチックの活用も、その取り組みの一つです。
モノづくり改革本部 久保田:当社は、長年にわたり家電事業を展開してきました。多くのプラスチックを使用する事業として、長年培ってきたプラスチック成形技術や材料開発のノウハウも有しています。そのため、私たちは、グローバルトップの環境カンパニーをめざし、再生プラスチックを活用した資源循環の分野において先導的な役割を担う必要があると考えています。
設計段階から循環を見据える
「環境配慮デザイン」
製品ごとに構造や素材・運転方式等に関する自社基準を定めており*1、それらを満たした製品を「環境配慮デザイン」製品として展開。例えば、リチウムイオン電池を取り外しやすくしたり、塗装を減らしたり、リサイクルしやすい材料を選んだりするなど、製品のライフサイクル全体で資源循環を考えて設計している。
*1 該当製品:冷蔵庫・洗濯機・クリーナー
※再生プラスチック使用率およびその他取り組みについては製品によって異なります。
再生プラスチックの活用は、
お客さまにとって
どのような価値があるのでしょうか?
モノづくり改革本部 久保田:機能性やデザイン性に加え、環境への配慮を製品選択の一つとして、「将来につながる選択をしている」という満足感につながっていくことが、大きな価値になっていると感じています。再生プラスチックの活用は、「環境に配慮した製品を選びたい」というお客さまに新たな選択肢を提供する取り組みでもあります。再生プラスチックならではの質感やデザイン表現など、新たな価値の創出にも挑戦していますが、何よりお客さま自身が環境への貢献を実感できることが大きいのではないでしょうか。
生産技術部 塩家:近年は、人や社会、そして地球環境に配慮した製品やサービスを選んで購入する「エシカル消費」への関心も高まっています。環境や持続可能な消費行動について学ぶ機会が増え、消費そのものに社会的な価値を求める人も増えています。再生プラスチックを活用した製品は、そうした価値観に応える選択肢の一つです。
モノづくり改革本部 友部:私たちがつくる家電品は、日々の暮らしの中で使われる身近な存在です。再生プラスチック活用率を表示した製品を選ぶことで、「自分も環境によい選択をしている」という実感にもつながると思います。
資源循環はメーカーだけでは実現できません。家電メーカーがリサイクルしやすい製品を設計し、回収・再商品化の仕組みを整えるとともに、お客さまが製品を使用後、適切な方法でリサイクルしていただくことで、資源循環は成り立ちます。だからこそ、製品を通じて「エシカル消費」への関心が広がり、お客さまとともに資源循環を進めていけることに大きな意味があるのです。
「ばらつきを乗り越え、
高品質を実現する」
その鍵は、グループ一貫の製造プロセス
再生プラスチックを家電品に使うのは難しいと聞きます。
どのような点が難しいのでしょうか?
モノづくり改革本部 久保田:再生プラスチックの最大の難しさは、「ばらつき」にあります。バージン材と違い、「どのような環境で使われていたのか」「どれくらいの期間使われていたのか」といった条件が一つひとつ異なります。さらに、家電品以外の部材や異物が混ざっていることもあるため、不確定要素が非常に多いのです。
加えて、使用済み家電品が回収される量も一定ではありません。品質のばらつきと原料の供給量を吸収しながら、最終的に家電品として求められる高い品質を実現しなければなりません。そこはバージン材とは比較にならないほど難しいところだと思います。
モノづくり改革本部 友部:家電リサイクル法では、家電4品目を回収し、資源化することが定められています。しかし、数年使われた製品もあればそれ以上使われた製品もあり、自社製品だけでなく他メーカーの製品も混在しています。同じ製品や個体が一つもないと言っていいほど多様なものが集まるため、含まれる材料もさまざまです。
しかも私たちは、その中から「良いものだけを選んで使う」ことはできません。家電リサイクル法では、できるだけ多くの資源を有効に活用することが求められています。そのため、多様な材料を適切に選別し、それぞれに適した用途へつなげていく必要があります。こうした多様なプラスチックを、いかに安定した品質の再生プラスチックへと変えていくか。そこに大きな難しさがあります。
生産技術部 塩家:さらに、家電品ごとに求められる性能も異なります。例えば洗濯乾燥機の温風経路周辺で使われる部品には、耐熱性が、冷蔵庫の低温環境で衝撃を受ける可能性のある部品には、低温時の耐衝撃性が求められます。同じ再生プラスチックでも、製品・部品ごとに必要な性能に合わせて材料を調整する必要があります。
また、部品によっても難易度は変わります。小さな部品や内部部品は比較的使いやすいのですが、大型部品や外観部品、機能部品は求められる強度や品質基準が高く、再生プラスチックの適用は難しくなります。そのため、バージン材と組み合わせた多層構造を採用したり、添加剤で性能を補強したり、色味を調整したりと、さまざまな技術を組み合わせながら製品への活用を進めています。
「ばらつき」をどう克服するのか?
その工夫は製品によってさまざま
再生プラスチックを利用する上で避けて通れない「ばらつき」。その課題を乗り越えるためのアプローチは、製品によって異なる。Part.3,4,5では、クリーナー、洗濯機、冷蔵庫の技術者たちの挑戦とその取り組みを紹介していく。
難易の高い再生プラスチックの活用を、
どのようなプロセスで
実現しているのでしょうか?
生産技術部 塩家:私たちの特徴は、使用済み家電品から回収したプラスチックの選別・再資源化から、再生プラスチックへの加工、製品への活用までを当グループ内で一貫して行っていることです。
家電リサイクル法に基づいて回収された使用済み家電品の一部が、まず株式会社関東エコリサイクル(KAREC)に集められます。そこでプラスチックを選別・回収し、細かく粉砕します。
次に、日立アプライアンステクノサービス株式会社(HAPTS)が砕いたプラスチックをペレットと呼ばれる成形しやすい形状に加工します。この工程には、性能や品質を整え、家電品に適した材料へと仕上げるための多くのノウハウが詰まっています。
そして、ペレットを私たちが製品に活用し、再び家電品として世の中に送り出します。
モノづくり改革本部 友部:それぞれの工程に難しさがありますが、当社グループ内で一気通貫につながっているからこそ、「どこに課題があるのか」「どこを改善すれば全体最適になるのか」を考えることができます。
私たちは選別・再資源化から製品化まで関わっているため、途中のプロセスまで踏み込んで改善することもでき、最適な改善策を検討できるのです。
モノづくり改革本部 久保田:私たちは、グループ一体となりプロジェクトとして「どこがボトルネックなのか」「何が課題なのか」を共有しながら、利用拡大に向けて活動してきました。グループ全体で連携しているからこそ、情報が途中で途切れることなく、最適な対策を打つことができ、再生プラスチックの適用範囲を広げることができたのだと思います。
再生プラスチックは、
どうやって生まれる?
その裏側にある、
KARECとHAPTSの現場
使用済み家電品から、どのように再び家電品に使える再生プラスチックが生まれるのか――その工程を支えているのが、KARECとHAPTSの現場だ。Part.2では、KARECとHAPTSの現場に潜入。再生プラスチックを生み出すために、どのような工夫や技術が凝縮されているのか、その知られざる舞台裏に迫る。
めざすのは“未来へつなぐ家電品”
資源循環が当たり前になる社会へ
今後さらに発展させていきたいことや
めざす姿について教えてください。
モノづくり改革本部 久保田:まだまだ道半ばだと思っています。再生プラスチックの活用は、取り組みを始めた頃からは大きく前進しましたが、外観部品や大型部品、機能部品など、難易の高い領域ではまだ十分とは言えません。耐熱性や強度、外観品質が厳しく求められる部品にも再生プラスチックを自在に使いこなせるようになれば、活用の可能性はさらに広がるはずです。その先には、再生プラスチックをバージン材と同等、あるいはそれ以上に活用できる未来もあると期待しています。
また、社会全体でも資源循環への機運は高まっています。2026年4月には改正資源有効利用促進法が施行され、一定規模以上の家電メーカーなどに対して、再生プラスチックの利用計画の策定や定期報告を求める制度が始まりました。海外でも自動車業界をはじめ、資源循環への取り組みが加速しています。
一方で、経済性の面ではまだ課題があります。再生プラスチック材の製造には多くの工程と技術が必要なため、どうしてもコストがかかることもあり、家電市場全体の大きな流れになっているとは言えません。
それでも、兆しは確実に見えています。だからこそ今は技術を磨き、いつでも大きく前進できるよう準備を進めている段階です。これまで培った技術を生かし、家電業界の資源循環を前に進めていければと思っています。
再生プラスチックの取り組みを通じて、
どんなメッセージを届けたいですか。
モノづくり改革本部 久保田:家電品を選ばれる際、「再生材だから品質が劣る」というイメージを持たないでいただきたい、と思っています。
私たちはプラスチック選別技術や材料設計、製品設計を積み重ねることで、再生プラスチックを使用する場合でも、性能や耐久性を確認し、製品に求められる品質基準を確保しています。必要な評価を行った上で製品に適用していることを知っていただきたいです。
生産技術部 塩家:
私は、家電品も次の世代へ受け継がれていく存在になれたらと思っています。例えば、自分が使っていた家電品がリサイクルされ、新しい製品の一部となって子どもや孫の世代へ受け継がれていく。そんな循環が当たり前になったら、とても素敵なことだと思うのです。
「再生」というと特別なことのように聞こえますが、資源を一度で使い切らず循環させていく。それは、自然界の物質循環にも通じるところがあります。そうした感覚を少しでも感じていただけたらうれしいです。
モノづくり改革本部 久保田:前の世代が使っていた家電品の一部を、次の世代が新しい製品として使う。そんなサイクルが実現できたら夢がありますよね。
生産技術部 塩家:私はそういう世界を実現したいと思っています。資源循環というと少し堅い言葉に聞こえますが、「未来とのつながり」と捉えていただけると、より身近に感じてもらえるのではないでしょうか。
モノづくり改革本部 友部:再生プラスチックの活用は、私たちを取り巻く環境課題の解決に向けた一つの手段です。だからこそ私たちだけでなく、製品を使う皆さんにも、「どのような未来を次の世代へ残していくのか」を一緒に考えていただけたらうれしいです。
使用済みの家電品を回収し、資源として生まれ変わらせ、再び新しい製品へとつなげていく。その循環の先には、限りある資源を次の世代へ受け継いでいく社会がある。 かつて誰かが使っていた家電品が、姿を変えて次の世代の暮らしを支える。そんな循環が当たり前になれば、「再生」は特別なものではなく、自然な営みの一部となるはずだ。私たちがめざしているのは、まさにそのような社会。家電品を通じて人と人、人と未来、そして人と地球をつなぐ——。資源循環への挑戦は、これからも続いていく。
本ページの記載内容は2026年10月時点のものです。
