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株式会社関東エコリサイクル(KAREC)
生産技術部高田 紀雄(左)
生産技術部 技術管理課
大越 崇行(右)
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日立アプライアンステクノサービス株式会社(HAPTS)
第一製造部 マテリアル課泉山 亮(左)
第一製造部 マテリアル課
渡辺 文裕(右)
「純度」を高めるために、
知識と技術で選び抜く
エアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビ——。色も大きさも異なる使用済み家電品が、ラインの上を次々と流れていく。その脇では、慣れた手つきで工具を操り、一台一台を丁寧に分解する作業者たち。取り外された部品は材料ごとに分別され、コンテナへと積み上げられていく。ラインは止まることなく、動き続けている。
かつて暮らしを支えていた家電品が、新たな価値を持つ資源へと生まれ変わるための“第一歩”を踏み出す場所——。それが、株式会社関東エコリサイクル(以下、KAREC)だ。
KARECは、1999年に設立された、全国でも珍しい生産工場と一体となったリサイクルプラントだ。家庭で役目を終えたエアコンや冷蔵庫、洗濯機、テレビは、販売店や指定引取場所を経てKARECへ集められる。運び込まれた家電品はまず手作業で解体され、冷媒フロンや有害物質を適切に回収。その後、破砕・選別工程を経て、鉄や銅、アルミ、プラスチックなどの資源へと生まれ変わる。
その中でも近年、重要性を増しているのが再生プラスチックだ。家電品に使われていたプラスチックを、新たな家電品・部品へと循環させる。その材料を生み出すために、KARECが最も大切にしているのが「純度」だという。
生産技術部 高田:「経済性だけを考えれば、人手をかけるよりも機械で処理し、プラスチックを回収する方が効率的です。ただ、回収したプラスチックを再び家電品に使うためには、高い純度が欠かせません。現状では、人の手で部品を取り外し、高純度な状態で回収することが最も確実な方法であり、私たちが特にこだわっている部分です」
単にプラスチックを回収すればよいわけではない。家電品に使われるプラスチックとして、主にポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)が挙げられる。中でもPPは、回収後の選別や再利用がしやすく、再生材として活用しやすい材料の一つとされている。しかし、同じPPでも用途やグレードによって性質は異なる。
生産技術部 高田:「例えば、冷蔵庫の野菜ケースと洗濯機の洗濯槽は、いずれもPPを材料としていますが、求められる特性は異なります。そのため、再利用する側の使いやすさを考え、現在は部品ごとに分けて回収・処理しています」
さらに難しいのは、集まってくる家電品が一つとして同じではないことだ。リサイクルプラントでは、複数のメーカー製の家電品をまとめて処理している。運び込まれる家電品はメーカーや構造、製造年代もさまざま。使用環境や使用年数によって状態も異なるため、画一的な処理では対応できない。
生産技術部 高田:「だからこそ、分解を担う作業者には、さまざまなメーカーや製品に関する知識が求められます。そのための知識や技術を身に付けることは欠かせません」
一つひとつの部品と向き合いながら、人の手と技で品質を磨き上げていく。そのこだわりの先にあるのは、常に「使う側が求める品質」だ。
循環の質を高めるために。
進化し続ける仕組み
家電リサイクル法は1998年に制定され、2001年に施行された。制度開始後、選別・再生技術の進展や再商品化等基準の見直しを背景に、プラスチックの再生利用を取り巻く環境も変化してきた。
生産技術部 高田:「制度開始当初は、再商品化率の算定対象として主に金属類などが中心となっていました。その後、選別・再生技術の進展や再商品化等基準の見直しにより、一定の品質を確保したプラスチックも再商品化等基準の算定に盛り込まれるようになったことが、再生利用が一層進む大きな転換点でした」
その後、世界的な資源循環への関心の高まりを受け、日本でも再生プラスチック活用の取り組みが加速していく。こうした流れの中で、KARECも着々と設備投資を進めてきた。近年に導入した浮沈選別装置もその一つだ。
生産技術部 大越:「プラスチックの洗浄と一次選別を行う工程には、浮沈選別装置を導入しています。水を用いた選別では、水よりも比重の小さいPPは浮き、比重の大きいプラスチックなどは沈みます。その比重差を利用してPPを効率的に選別・回収できるのが、この装置です。回収したPPは、再び家電品に活用しやすい材料となります」
生産技術部 高田:「現状は技術的な制約もあり、人の手による選別に頼っている部分があります。ただ、将来的にはそれだけではなく、機械による選別や回収の高度化も進めていかなければならない。浮沈選別装置が導入されたことで、ようやくその土台ができました。これからは回収した材料の品質をどう高めていくか、他部署とも連携しながら、より良い方法を模索していきたいと思っています」
KARECの設備づくりには、もう一つ大切なこだわりがある。「工場を止めないこと」だ。
生産技術部 高田:「使用済み家電品は毎日入荷してくるため、設備が止まると処理が滞り、在庫がすぐに増えてしまいます。そのため、安定して処理を続けられる体制づくりを大切にしてきました。例えば、当社では冷蔵庫を処理するラインと、エアコン・洗濯機を処理するラインを分けて設置しています。他のリサイクルプラントでは、破砕機は製品ごとに分かれていても、その後の選別工程を共通化しているケースもありますが、当社では選別工程も含めて二系統化しています。二系統にしておけば、万が一どちらかが停止しても、もう一方で処理を継続できます。安定したリサイクルを実現するための重要な工夫の一つです」
「工場を止めない」ための工夫は、ライン設計だけではない。トラブルを未然に防ぐため、コンベアなどの搬送装置や破砕・選別設備の状態を常時監視し、わずかな異常の兆候も見逃さない。さらに、万が一の火災に備え、AI火災検知システムも導入している。こうした設備監視体制によって、安全かつ効率的な処理を実現している。
だが、技術革新の手を緩めることはない。再生プラスチックの需要拡大に向けて、さらなる進化が必要だと考えているからだ。
生産技術部 高田:「欧州を中心に再生プラスチックの活用を求める動きが広がっており、その需要は今後さらに高まっていくと思います。私たちも再生プラスチックをより有効に活用できる取り組みを進めていきたいと考えています。そのためには、新しい技術だけでなく、既存技術をうまく組み合わせていくことも大切です。そうした工夫の積み重ねが、再生プラスチックのさらなる活用や、より良い資源循環につながっていくのではないかと思っています」
人の手による解体・選別と、設備による高度な処理。その両方を進化させ続けるKARECには、再び家電品に活用できる品質を追求するための知恵と工夫が積み重ねられていた。
選び抜いたその先
——プラスチック材に新たな価値を与えるHAPTS
机の上には、再生プラスチックが成形材料へと生まれ変わる各工程のサンプルが並んでいた。一見すると大きな違いはないように見える。だが、よく見ると、粉砕されたプラスチック片、選別工程を経た材料、そして粒状のペレットと、形状や色合いが少しずつ変化している。
KARECで人の手と設備によって選び抜かれたプラスチック材——そのバトンを受け取るのが、日立アプライアンステクノサービス株式会社(以下、HAPTS)だ。
第一製造部 渡辺:「私たちは、KARECが回収・選別したプラスチック材を、成形材料となる再生プラスチック(ペレット)への加工に加え、着色や、抗菌性・難燃性・強度といった機能・特性の付与を行っています。回収されるプラスチック材には、さまざまな種類があります。その中から家電品への再利用に適したPPを選別・回収し、さらに選別工程を重ねて純度を高めながら、再び製品に使えるペレットへ加工しています」
KARECで回収・選別されたプラスチック材は、まず風力選別によって粉塵やごみなどの軽い異物と分けられる。その後、色相や物性を調整するための材料を混合し、押出成形機へ投入。押出成形機内では、フィルタを通してゴムや金属などの微細な異物を取り除き、粒状のペレットへと加工していく。
一見するとシンプルな工程だが、その内部にはHAPTSならではの工夫が詰まっている。
第一製造部 泉山:「回収されたプラスチック材には、異物や異なるプラスチックの混入に加え、劣化の進み具合にもばらつきがあります。そのままでは、家電品に求められる品質を確保することができません。さらに、用途によって求められる性能も異なるため、それぞれの要求仕様に合わせて材料を仕上げる必要があります」
第一製造部 渡辺:「もう一つ難しいのが、色味です。破砕・選別されたプラスチックは生産ロットごとに色味が異なるため、同じ色を再現するには都度調整が必要です。材料としては良好に見えても、成形品になると色がばらついてしまうケースがあり、品質を安定させるためには細かな管理が欠かせません」
だからこそHAPTSが徹底しているのは、「きれいであること」と「ばらつきがないこと」だ。異物や異なる材質の混入をできる限り減らし、色相を安定させる。そのための選別技術や品質向上への取り組みは、今もなお進化を続けている。
第一製造部 泉山:「資源循環だけを考えればよいわけではありません。製品、そして部品に必要とされる品質を確保することが不可欠です」
環境価値と製品品質。その両方を成立させることこそが、HAPTSのモノづくりなのである。
異物を見逃さない。
品質を支える「3段階のろ過工程」
こうしたHAPTSの技術を象徴する一つが、押出成形機の途中で通す「3段階のろ過工程」だ。
第一製造部 泉山:「KARECで選別されたプラスチックにも、わずかな異物は残っています。そこでHAPTSでは、押出成形機の工程内に複数のフィルタを設け、異物を段階的に除去しています」
異物を取り除くためのフィルタの調整は、HAPTSが長年磨き上げてきた技術の一つだ。異物を効率よく除去するにはフィルタの目を細かくする必要がある。一方で、細かくしすぎると異物が詰まりやすくなり、溶融したプラスチックの流れが妨げられて生産性に影響してしまう。そこでHAPTSでは、方式やメッシュサイズの異なる複数のフィルタを組み合わせ、異物除去と安定生産の両立を図っている。
第一製造部 渡辺:「まず、溶融したプラスチックをフィルタに通し、PP以外のプラスチック、ゴムや金属などの比較的大きな異物を取り除きます。その後、さらに細かな異物を段階的に除去し、最終的には目視では確認しづらいレベルの微細な異物までふるい分けていきます。フィルタごとに役割を分けながら3段階で選別を行うことで、再生プラスチックの品質向上につなげています」
近年は、より高品質な再生プラスチックを生み出すため、風力選別工程の強化に加え、二段押出方式を採用した押出成形機や複数のフィルタを導入している。異物除去能力はさらに向上しているという。こうした技術の積み重ねによって、再生プラスチックは再び家電品に活用できる材料へと生まれ変わる。しかし、HAPTSの挑戦はここで終わらない。
第一製造部 泉山:「今後は、より高品質で採用しやすい再生プラスチック材の開発を進め、家電品への適用範囲を広げることで、グループ内の資源循環をさらに高めていくことに貢献できればと考えています」
再生プラスチックの活用領域を広げるために欠かせないのが、品質への信頼だ。異物を取り除き、色味を整え、性能のばらつきを抑える。こうした工夫の積み重ねによって、用途に応じて求められる品質を安定して確保することが、製品・部品への採用拡大につながる——HAPTSは、その品質づくりを通じて、再生プラスチックが材料の選択肢として広く認知されることをめざしている。「再生プラスチックを使うことが、製品づくりにおいて当たり前の選択肢となる」。そんな未来に向けて、HAPTSは品質への信頼を積み重ねながら、資源循環の可能性を広げ続けている。
「価値をめぐらす再生プラスチックの可能性」。
その可能性は、決して技術だけで実現されるものではなかった。
KARECでの選別、HAPTSでの品質づくり、そして製品へ活用するための数々の工夫。
一つひとつの技術と工夫がつながることで、プラスチックは、再び価値ある資源として循環していく。
家電品から生まれた資源が、新たな家電品へと受け継がれていく——。
その循環が当たり前になる未来へ向けて、挑戦はこれからも続いていく。
本ページの記載内容は2026年10月時点のものです。
