画像: 鮮度を守る~冷蔵庫開発者の思い②~

毎日の暮らしを支える冷蔵庫。
日立は、食品をおいしく保存し、さらにらくに使っていただけるよう、常にお客さまに寄り添った製品開発を続けています。
今回「鮮度を守る」をテーマに、日立冷蔵庫の鮮度保持技術について、開発に関わったメンバーに話を聞き、開発当時の思いとともに、その技術の素晴らしさを連載でお届けします。

第2回は野菜室の鮮度保持技術「新鮮スリープ野菜室」です。

新鮮スリープ野菜室 ー 野菜室の鮮度を守る ー

画像: 國分 真子 (こくぶ まこ) 日立グローバルライフソリューションズ株式会社 ホームソリューション事業部 冷熱家電本部 設計部 技師

國分 真子 (こくぶ まこ)
日立グローバルライフソリューションズ株式会社
ホームソリューション事業部
冷熱家電本部 設計部 技師

「新鮮スリープ野菜室」は10周年だそうですね!どんな機能でしょうか?

はい、初めて搭載したのは2014年でした。当時からお客さまには「眠らせるように保存して鮮度を守る」と説明しています。実は、野菜は収穫後も呼吸していて、保有する栄養成分を消費し、水分を蒸散しながら生命活動を続けています。その中でエチレンガスというホルモンも放出しているのですが、エチレンガスは自らの熟成を促す大切な役割を持つ一方、熟成後も放出が続くと老化を促進することにもなります。そこで、呼吸活動を抑えエチレンガスを減らすことで鮮度を保つという仕組みです。保有する栄養素を消費しながら生命活動をする野菜だからこそ、眠らせるように保存することで鮮度が守られるんです。

画像: R-VW57V「新鮮スリープ野菜室」イメージ図

R-VW57V「新鮮スリープ野菜室」イメージ図

「新鮮スリープ野菜室」を開発しようと思ったきっかけは?

開発当時の社会背景として、野菜の保存性能を重視する声が多くありました。また、野菜の摂取量不足がある一方で、野菜は鮮度が落ちて廃棄される量が多いという事実もありました。日立ではそれまでも保鮮の技術はありましたが、さらなる高みをめざして野菜室の保存性能の向上を進めているところでした。

また、並行して進めていたのが、冷蔵室にあるチルドルームの保鮮技術の進化です。この技術は、ルーム内を減圧することで酸素量を減らして鮮度を保つというものです。減圧するほど酸素量は減りますが、さらに減圧するのは難易度の高いことでした。その時、空気中に20%もある酸素量をコントロールするよりも、そのほかのガス成分に着目してはどうかという考えに至りました。そこで参考にしたのが業務用技術の「CA貯蔵(controlled atmosphere storage)」で活用している炭酸ガスです。「CA貯蔵」は、主に野菜や果物の保管倉庫に使われていますが、”炭酸ガス濃度が大気よりも高く、酸素濃度が低い”状態にガス組成を調節して、野菜や果物の呼吸を抑えることで鮮度を保ちながら長期間貯蔵する技術です。業務用ではガスボンベで炭酸ガスを供給していますが、家庭用にそのまま応用するというわけにはいきませんので、光触媒技術でニオイやエチレンガスを分解して炭酸ガスを生成することで、食品を眠らせるように保存する「スリープ保存」の技術を確立しました。

このチルドルームの「スリープ保存」の技術がターニングポイントとなりましたね。この技術を野菜室に応用できないかと考えたのが「新鮮スリープ野菜室」を開発する大きなきっかけでした。

確立した技術といっても、野菜室に展開するのは簡単なことではないですよね?

はい、「スリープ保存」の技術を野菜室に応用するにあたり、野菜室内の炭酸ガス濃度を高める構造にする必要がありました。そこで、構造設計を担当しているチームと新しい野菜室の開発に取り組みました。
まず、野菜室の密閉度を高めた試作品をつくり、野菜の保存性がどうなるか実験しました。すると、炭酸ガスを充満させることができ、野菜の呼吸が抑えられ、鮮度が格段にアップすることが確認できました。これは「いける!」と思いました。炭酸ガスを発生させるための触媒としては、2014年発売製品ではLED光源が必要な光触媒を使用していたのですが、その後、北海道大学が、熱や光を使用せずに、冷蔵温度でもエチレンガスを炭酸ガスに分解できる世界初のプラチナ触媒を開発したと発表したのを知り、「これは冷蔵庫に最適だ!」とひらめき、すぐに北海道大学に連絡をとりました。そして、翌2015年にはプラチナ触媒を採用した「新鮮スリープ野菜室」搭載機種を発売し、現在にも続いています。

画像: 野菜の鮮度を長持ちさせる重要な要素、プラチナ触媒(写真右)

野菜の鮮度を長持ちさせる重要な要素、プラチナ触媒(写真右)

次に、密閉度の高い構造を作るために、下段スペースとボトルコーナーとの間に仕切りを設けることで、下段スペースに炭酸ガスを保持する仕組みを作りました。ところが、密閉度の高い構造にすることで、水分が容器にたまって、水浸しになってしまいました。野菜は水分を多く含むため、呼吸によりその水分が排出され、さらに密閉度の高い空間では水分が蒸発しにくいため水が溜まってしまうのです。そこで、容器に穴をあけてお客さまに水を捨ててもらう方法や、水分を蒸散させるなど数種類の試作品を作ってもらいました。しかし、水は腐敗しやすく、またメンテナンスの手間がかかると何よりお客さまに受け入れていただけません。お客さまに手間をかけすにできる方法に悩んでいたとき、除湿機や加湿器で水を吸放湿する素材を使用していることからアイデアを得てできたのが「うるおいユニット」です。野菜から出た余分な水分をパネルで結露させ、蒸発させるものです。これによって、野菜室を水浸しにせずに、野菜のみずみずしさが保てるのです。

画像: 野菜室のカットモデル

野菜室のカットモデル

「新鮮スリープ野菜室」の実力は!?

こちらが新鮮スリープ野菜室で10日間保存した野菜と、そうではない野菜室で10日間保存した野菜です。一目瞭然ですよね。
今年は、「新鮮スリープ野菜室」を搭載した「まんなか野菜」VWタイプ2機種を新たにラインアップしました。ぜひ「新鮮スリープ野菜室」の技術にも注目していただき、その実力を実感していただけたら嬉しいです!

画像: 「新鮮スリープ野菜室」の実力は!?

※当社調べ。食品の種類・状態・量によって効果が異なります。
※2023年度製品R-GXCC67T 新鮮スリープ野菜室(下段スペース)に収納可能な量の野菜を室温約20℃でラップなし、ドア開閉なしで10日間保存。2022年度製品R-H54Sの野菜室(新鮮スリープ野菜室未搭載)にも容積比で同程度の野菜を収納しています。

「新鮮スリープ野菜室」について

日立冷蔵庫紹介ページ

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